家庭のまつり

 昔から日本人は、日々の生活の中で目に見えない大きな力を感じてきました。それらは岩や木、山や海、火や水、空や大地などさまざまな自然の中に見出され、万物に神が宿るという信仰が伝えられてきました。のちに社を建て神々をお祀(まつ)りするようになると、そこは神社と呼ばれるようになりました。

 このような神社の神さまをより身近にお祀りして、日々手を合わせるのが家庭のまつりです。

 現在では洋風住宅が多くなり、神棚をどこに設置するか迷われることもあるようです。お神札(ふだ)をお祀りする場所は、家族が揃ってお参りできる場所で、目線より高い位置がよいでしょう。一般的にはお神札が南か東の方角を向くのがよいとされています。ただし、場所や向きにこだわりすぎてお祀りしないよりも、出来るかたちでお祀りすることが大切です。

 「お天道さまが見ている」とか「バチが当たる」などという言葉を耳にしたことがあるように、日々の生活の中に神さまを感じることで、大切な倫理観や道徳心を養う助けにもなります。

 忙しい現代社会ですが、家庭の中で神さまに手を合わせる時間をもつことで、家族の絆が強まり、親は子を慈しみ、子は親を慕うなど、心豊かな家庭を築くことにもなるでしょう。

神棚のまつり方

 南または東向きの、明るく清浄なところにおまつりします。お神札をおまつりする前に、丁寧に清掃をします。そして、氏神さまの神職に「清祓」をしていただくのがよいでしょう。

お神札のまつり方

三社造りの場合
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 三社造りの場合は、中央に神宮大麻、向かって右に氏神さま、左に崇敬している神社のお神札の順がよいでしょう。

一社造りの場合
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 一社造りの場合は、一番手前に神宮大麻、次に氏神さま、その後ろに崇敬している神社のお神札の順がよいでしょう。

お参りの仕方

 神社参拝と同じ二拝二拍手一拝の作法で朝・夕にお参りします。お誕生日などのお祝いのときには、本人を中心に、家族で一緒にお参りをするのがよいでしょう。

古いお神札の納め方

 年末、新しいお神札を受ける時に、一年間の感謝の気持ちを込めて、氏神さまに納めます。

お神札と神棚 よくあるご質問

Q1.なぜ、神棚のお神札(ふだ)を一年ごとに新しくするのですか?
A.「若水(わかみず)」といって、元日の早朝に汲(く)んだ水には特別な霊力があると信じられてきたように、新しいものに宿る瑞々(みずみず)しい生命力は古(いにしえ)から今に至るまで、日本人にとって畏敬(いけい)の対象であり続けています。
 すべてのものが改まるお正月を迎えるにあたりお神札を新たにするのは、より新しいお力、より若々しい生命をいただこうとする日本人の心性に根差した習慣であり、先祖伝来の美風です。
Q2.なぜ、神棚の向きを東や南にするのですか?
A.私たち日本人の主食は米です。それゆえ稲作にもたらされる自然の恵みを代表する太陽への信仰を、私たちは祖先崇拝と共に今日までもち続けています。
 太陽は日の神さまの象徴ともされ、とりわけ生成発展の「氣(き)」を感じさせる午前中の、東から南天昇りつめる太陽の光を尊び、神棚においても東や南を神々が向かわれる吉方としているためです。
Q3.身内に不幸がありました。神事や祝い事、神棚はどうしたらよいでしょうか?
A.喪中(もちゅう)の間は神事や祝い事は遠慮しなければなりません。喪中は喪服を着ている期間のことですが、かつてそれは血縁の濃さなどによる区別があり、厳密に守られてきました。しかし都市化や核家族化などの社会状況の変化と共に曖昧(あいまい)になっています。
 今日では最長で五十日(親や子、配偶者の場合)を一応の「喪明(もあ)け」の目安とし、親密度により期間を考えればよろしいかと思います。そして、その間は神棚の前面を半紙など白紙で覆(おお)います。
 喪明け後は家を清め、平常通りに神事を行うことができます。また、祝い事や祭事の参加も出来るようになります。尚、喪中と忌中(きちゅう)は本来別の意味ですが、今では同義とすることがあります。
Q4.厄除(やくよけ)のご祈祷を受けたらお神札をいただきました。
アパートなので神棚を設けることができません。どういう扱いをすればよいでしょうか?
A.そのお神札は、厄除のご祈祷をされた印(しるし)のお神札で、あなたを守ってくださいます。たとえ神棚がなくても、タンスやロッカーの上などをきれいにして、そこに祀るのであれば問題はありません。お供物はできる範囲でお供えすれば結構です。大切なのは神さまにお守りいただくという気持ち、日々のご加護に対する感謝です。朝には今日一日の無事を祈り、晩には感謝の祈りを捧げましょう。
 人間にとって祈ることは自然なことです。祈りは安心につながります。家庭を持てば、もっと守るものが増えます。そしてもっと目に見えないお力が必要となります。神棚はそのときにでも設ければよいでしょう。
 最近は本格的な神棚[お神札を収める宮形(みやがた)]の他に、一人暮らしに最適な、場所をとらない壁掛け式の簡易神棚もありますので、氏神神社にお問い合せください。
Q5.ご祈祷でいただいた木のお神札は、宮形には入りませんがどうしたらよいでしょう。
A.宮形の左右にお祀りください。また、神社からいただいた撤下(てっか)のお供物(お酒、お菓子など)は粗末にならないように心掛け、ご家族で召し上がってください。また、いただいたお供物や記念品などは神棚に上げないようにして、常に神棚の清浄を保つように心掛けましょう。尚、願いが叶ったときは、お礼参りとして感謝を込めてお神札を神社に納めるのが礼儀です。
Q6.「天」や「雲」と書いた紙を、神棚の上の天井に貼るのはどんな意味があるのでしょうか?
A.二階建ての家の一階に神棚を設けた場合、尊い神さまをお祀りした神棚の上を、階上の人がやむを得ず踏む場合があります。これはあまりに畏(おそ)れ多いということから、せめて「天」「雲」と書いた紙を貼って「神棚より上は天上であり雲上であって、他には何もありません」と、神さまにお許しをいただこうという心情を表したものです。
Q7.神饌(しんせん)[お供え]の供え方を教えてください。
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お供えの一例
A.神棚には、通常、米・酒・塩・水をお供えします。米や塩は平瓮(ひらか)、水は水器(すいき)、酒は瓶子(へいし)という白色陶器の祭器具が用いられます。
 お供えの仕方は、我国では古来より正中(せいちゅう)[中心線]を尊ぶため、神棚にお供えする際にも、図のように米を中央とし、次に酒、塩、水をお供えします。
 米や酒など日常のお供えはもちろんですが、そのほか、季節の初物やいただきものなど珍しい食べ物も、神棚にお供えしてから家族でいただくように心掛けたいものです。